「グループワーク、ペアトーク禁止令」下での授業について、あるいは新しい対話型授業の可能性
勤務校で「授業中のグループワーク、ペアトーク等禁止令」が出た。
まあ、このご時世で当然と言えば当然なのだけど、ここ数年間「いかに“教師主導の学び”を脱するか」ということを考えながら授業をしていた身としては
『ちょっと、それって授業を何年分元に戻さなきゃいけないの…?』
と、なかなか気持ちがついていかなかった。
多少大げさかもしれないけれど、翼をもがれたような、そんな感じ。
あんなに大空を飛べていたのに。また地上からやり直しかよ。
……というのが約2週間前のこと。
勤務校では本格的な授業開始が明日なのだけど、いま僕はどちらかというと「新しい対話型授業」の可能性に、むしろわくわくしている。
学校が禁止したのは、「グループワーク、ペアトーク等」であって、「主体的・対話的で深い学び」そのものではないはずだ。
僕の目指している「自由で、自然で、自発的な学び」だって、もちろん禁止されていない。
禁止されたのが「手段」なら、別の「手段」を考えればいい。試せばいい。そしてみんなであーだこーだと言いながら改善すればいい。それだけの話だ。
むしろこの状況下、生徒たちは「新しくこんな方法を考えているんだけど」と説明すれば「なんで今までの方法を変えるの?」とはならないはずだ。なんだチャンスじゃないか。
……なんてことを考えていたら、いろんなアイディアが出てくるようになったので、ぜひこれはアイディアをブログで公開してみて、その結果をまたブログで発信してみて、どんどんブラッシュアップしていきたい、と思うにいたった。
ということで、以下は僕なりの「コロナ環境下でもできる『主体的・対話的で深い学び』の授業方法案」である。
ちなみに、この授業は何度も言うようだが未実施なので、実際にどのようになるかはまだ分からない。
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まず、状況を整理する。勤務校での授業の条件は以下の通り。
- グループワーク、ペアトークなど、生徒同士が集まり、対面で話をする活動をしてはならない
- 教員も、生徒に近づいて説明するような指導は避ける
- 生徒が意見を全体発表するのも(グレーゾーンだが)極力避ける
- 同じ授業をZOOMで遠隔授業として聞いている生徒もいるので、その生徒にも配慮する
この状況下で、どのように「生徒の対話」を引き出すか、が解くべき問題となる。
最初に考えたのは、むしろ発想を逆にしてみることだった。
「では、何ができるのか」
「どんな授業方法ならこの状況下でも可能なのか」
「できること」として思いついたのは、下記8つ
<教員側ができること>
- 教員が全体に向かって話しかける
- 教員がプリント等を配布・回収する
- 教員が板書をする
- 教員がPCの画面等を映し出す
- ZOOMで参加している生徒に、個別でメッセージを送る
<生徒側ができること>
- プリント等に自分の考えを記述する
- ハンドサインで自分が考えていることを表現する
- (ZOOMで参加している生徒)基本的に何でもOK
それぞれとても単純ではあるけれど、組み合わせるとたとえば以下のような授業プランが考えられる。
案① 紙上の対話型
教員主導で授業を行うが、5〜10分に一度程度、生徒からのコメントを回収し、それに沿って授業を進める
- 最初に、生徒全員に小さな紙(A4の8分の1くらい)を1人5枚ほど配る
- 教員は説明を短くするなど、授業の「区切り」を意識的につくる
- その「区切り」のたびに、生徒は小さい紙に授業への「質問・疑問」「コメント」などを書く
- 教員はそれを読み上げ、フィードバックをする形で授業を展開する
読みあげる際は、生徒の名前を言ってもいいが、たぶん言わないほうが生徒は積極的に記述をすると思う。記名させたい場合も、出席番号のみだと進行がスムーズ。
上手く回ってきたら、生徒の質問を取り上げ「これにみんなはどう説明する?」などの発問から回答を紙に書かせてもよい。
対話のツールは紙にこだわらず、簡単な質問に対しては「1だと思ったらグー、2だと思ったらパーを挙げて」のようなハンドサインも有効。普段、中学校や高校ではハンドサインを使わないことが多いのだけど、この状況下ならかえってやりやすい気がする。
案② ブレインライティング型
(たとえば調べ学習などで)仮想の「小グループ」を作り、筆談で意見を交換し合う形式
- 教員が授業の課題を提示する
- 最初にランダムに3〜4人のグループを決定する
- グループごとに1枚のプリントを配り、それを回しながら、プリント上で課題についての議論を行う
- たとえば
* プリントを記入し終えたら教員を呼び、次の人に回してもらう
* 自分のところにプリントが来たら、2分以内に何かしらの内容を書かなくてはならない
* 授業中に2回だけ『先生ターン』を使え、そのときは教員が質問へのヒントなどを書いてくれる
などのルールを定める - ルールに沿ってプリントを回していき、最後数分は授業の振り返りを行う
- その間に教員は各グループの紙を人数分コピーし、配布して終了
ルールは工夫次第でいろいろな方向にもっていけると思う。「グループを4人、1人あたりの時間を4分」にすれば、12分自分で考えたり調べたりして、4分アウトプット、という形で重めの調べ学習もできるし、逆にグループの人数を少なく、1人あたり時間を短くして、授業中にグループ変更も実施すれば(先生の運動量は増えるが)、通常のアクティブラーニング型にも近づけられる。
グループのランダム性は、通常のアクティブラーニングではなかなか実現できない要素なので、この形式のメリットともなる。グループはエクセルのランダム関数(RAND())などを使って作成すると便利。
慣れて来たらグループを匿名にし、誰が同じグループなのか分からないようにしてもおもしろそう。
ZOOMからの参加生徒には、プリントの内容を教室から画像で送信する。
案③ スモールティーチャー型
ZOOMで参加している生徒が「全員に分かる授業をする」ことを目標に教室全体で学習を進めていく形式
- ZOOMで参加している生徒には予習をしてきてもらう
- その予習内容をもとに、ZOOMから教室に向けて説明をしてもらう
- 教室からはハンドサインや紙に書いたコメントなどでZOOMの生徒にフィードバックする
- 教員も適宜会話に入り、教室全体で内容の理解が深まるようアシストをする
ZOOMでつながっている生徒は(ある意味)治外法権なので、いろんな役割を任せられる。たとえばインターネットでの調べものをZOOMの生徒にお願いする、などもおもしろい。
全体的に、教室で授業を受けている生徒よりもZOOM参加の生徒の方が集中力が保ちにくく、教員への質問もしにくいと思われるので、そのアンバランスを是正する方法でもある。
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とりあえず上記のような授業を試してみようと思っている。
不幸な外圧がきっかけではあるけれど、これらの授業形式で、今までには達成できなかったことも少なからず実現できるのではないかと思うし、その点に僕はわくわくしている。
報告は、また今度。