旅する教師の業務報告

「旅する教師」として「みんなを自由にする」活動をしています。ご査収ください。

そういえばこんなテストをやってきた。

昨日の記事をかきながら、テストについてはあまり変わったことをやって来なかったんだよなあ、と思っていたのだけど、ん、あった。

現任校に来るときに、それまでやっていた教育実践をすべて捨ててきたので(いま思うとそれなりにオモシロいことをやっていたのだけど。まぁ気分です)すっかり忘れていたのだけど、どういう形でテストをやればよりよい形になるのかを苦心していた時代があったのでした(※たかだか5〜6年前です)。


【その1】一発勝負からの脱却→追テストの実施

最初にやったのは「定期試験後に、似た内容でもう一度テストをする」ということ。試験を返したときに「1週間後、もう一度似た内容で追テストをするよ」と宣言して、それまでの1週間は授業を進めずにテスト直しの時間に充てた。追テストで点数が上がれば成績には反映させるから、がんばってね、と。

これは、当時教えていたのが中1だったのもあって「最初の内容でつまづいていたら今後の数学の授業がまったく分からなくなるぞ…」という思いと「中学校最初の定期試験の場で本領発揮できなかった生徒を救いたい」という思い(実際そういう生徒は結構いた)があってやったことなのだけど、効果はそれなりにあって、ほぼ同じ内容の(むしろちょっと難易度を上げた)追テストで平均点が8点くらい上がったし、中には30点近く点数を上げて後日「あれで数学へのやる気が上がった」と言ってくれた生徒もいたくらい。

だけど、まあ、叩かれた。先生方からも保護者からも。「試験なんだから一発勝負にしないと」とか「成績にどう入るのかが分かりにくい」とか「勝手にそんなことするな」とか「追テストを理由に部活を休む生徒がいるぞ、どうしてくれる!」とか。

もちろん僕にも否はあった。何しろその追テスト、本番の試験前には公表していなかったので(というより、本番のテストで平均点が想像以上に低かったことが要因の一つ。これは当時の僕の問題作成能力の低さが根本原因)、最初の本番のテストでがんばって準備をして高得点をとった生徒からみれば「不公平」と見なされても仕方ない。

個人的には、「成績はあくまで最終的な到達度で評価すべきなので、試験当日にどこまで分かっていたかより、最終的にどこまで分かっていたかのほうが大切」という論理でやっていたのだけど、これもあまり伝わらず。

その後、「本番の試験の重みも学ばせるべき」という説得を受け、次のテストのときには、本番試験と追テストの評価配分を変えてみた(追テストでの点数は本番試験の半分として評価)のだけど「そもそも試験を複数回行うのがおかしい」という意見をいただき、あえなく取り下げた実践。

(事前に仕組みを説明するとか、もうちょっと計画的に・周囲の賛同を得つつ進められたら、もっと価値ある実践になったのかもなあ)

【その2】ブラックボックス型の試験からの脱却→模擬試験問題の配布

追テストに事実上の禁止命令が出てしまったので、さあどうしようか、と考えたのがこちらの策。簡単に言うと、試験10日くらい前に試験問題と同じ傾向のテスト問題(模擬試験問題)を全体配付し、「これに似た問題を出すので、準備しておいてくださいね」と言うもの(模擬試験問題を作り直して2〜3回配付したこともあった)。

模擬試験問題には、問題と配点のほかに
・“本番のテストでは数字だけを変えます/似た形式の文章題が出ます"などの試験問題についての情報
・”この問題が解けなかった人は教科書○ページを練習”などの勉強方法についての情報
を書いていて、それを使えば一通りの試験対策ができる形にしていた。

これは、前述の追テストに比べると圧倒的にクレームの少ない実践で、結局1年まるごとこれをやっていた学年もあった(逆になぜ1年しか続かなかったのかは後述)。数学が苦手だった生徒が「先生の模擬試験問題があったから数学にやる気が出たし、それで問題が解けたから数学が好きになった」とも言ってくれた(結局その子は、模擬試験を配らなくなってからも80点台の点数をキープするようになっていた)し、学校の近くの塾では模擬試験問題を参考にしたオリジナル予想問題をつくってテスト対策をしてくれていた(これは当時の僕にとっては仲間が増えた気持ちでかなり嬉しかった)。

あと、あまり意図はしていなかったのだけど、「配点も書く」というのがよかったようで、生徒にとっては「どこの問題がどれくらい大事かが分かる」という効果もあったようだ(試験に慣れてくると大体そんなことはカンで分かるようになるのだけど、それがまだ分からないのが中学生なのかもしれない)。

中学校の数学では「この単元はこの問題が肝!」と言えるような問題(連立方程式の加減法とか、1次関数のグラフとか、二次方程式の解の公式とか)があるので、テスト範囲のそういった問題を模擬試験の中心に入れることによって、生徒が些末な問題に時間を使いすぎないようにする効果もあった。そしてたぶん、そういった「オーソドックスな問題」を中心に据えたからこそ、周りの先生方や保護者の方、塾の先生にも肯定的に見られたのだろうと思う。

ただ反面、少し変わった問題、考えさせる問題は入れにくくなった。言い方を変えると、テストの「学力を測る」面だけに特化しすぎてしまい、「テストを通じて学力をつける」という意味が薄くなってしまった。

もちろん、数問は考えさせる問題を入れていたのだけど、完全に見たこともないような、新しいタイプの問題はなかなか入れられず、最終的には自分で自分の首を締めるような状況になってしまった。

だから、次の年はどうしようかな、と考えていたところで、次の年度は1学年を2人の先生で分担して教える形式になったため、一度全部ちゃらにしようと、全部やめた。

(追テストもだけど、こういう取り組みは学年の数学担当が複数人になると途端にハードルが上がる。と言っても、現任校では学年の複数人担当が標準なので、その中でどうすれば新しい試みを実践していけるか、という点から考えないといけない)

 

と、そんなこんなで今に至ります。

今後やってみたい実践としては、模擬試験問題をテスト前と言わず前のテストが終わった直後に配付しておきつつ、40点分はフリー出題、みたいなハイブリッド形式かなあ。

まあ、本音としては前回書いたような『テストって別に要らないよね?』という考え方なのだけど、それでもテストが残り続けるのならば、こういう形で「テスト」というイベントをより意味のある形に改変していってもいいのかな、と。思っています。